立冬、火を焚く。鍛冶の神をまつる花山稲荷と、京都のお火焚きお火焚き | 2026.11.03

立冬、火を焚く。鍛冶の神をまつる花山稲荷と、京都のお火焚き

火焚串を鞴の形に積み、神前の燈明から火を移す。炎の勢いが落ち着くころには、みかんが火へ投げ入れられます。

2026年の立冬は11月7日。その翌日、京都・山科の花山稲荷神社で行われるのが、火焚祭です。ここでは「ふいご祭」とも呼ばれ、秋の収穫を感謝するだけでなく、鍛冶とものづくりの記憶を伝えています。

京都では立冬のころ、各地の神社で「お火焚き」が営まれます。火に感謝し、穢れを祓い、実りを神へ返し、冬の息災を願う。炎は同じでも、そこに重なる土地の記憶は少しずつ違います。

鞴の形に、火焚串を積む

花山稲荷神社に伝わるのは、平安時代の刀工・三条小鍛冶宗近が、この地の土で鞴を築き、稲荷大神の助けを得て名刀「小狐丸」を鍛えたという伝承です。

鞴は、炉へ風を送り、火の温度を上げる道具。鉄を道具へ変える仕事には欠かせません。花山稲荷の火焚祭では、その伝承にちなみ、奉納された火焚串を鞴を思わせる独特の形に積み、火を移します。

神社が伝える祭りの中心は、単なる勇壮さではありません。火の怖さと力を知り、つくる前に心身を清めること。鍛冶師だけでなく、金属加工や手仕事に携わる人々の信仰を集めてきたこと。そして「ものづくりの心」を、過去から未来へ渡すことです。

火に入れたみかんを、冬の守りに

火勢が弱まり始めると、供えられたみかんが火へ投げ入れられます。その火に触れたみかんを食べると、風邪をひかずに冬を越せるという言い伝えがあります。

橘は、古くから不老長寿を象徴する実。そこへ、冬に不足しがちな栄養を補う暮らしの知恵も重なったのではないかと、神社は説明しています。

祭りには、信仰だけでなく、農と鍛冶が支え合った暮らしや、季節を無事に越えるための知恵が残っています。

立冬の火を訪ねる、京都のお火焚き

貴船神社|水の神を、火で蘇らせる

立冬当日の11月7日、貴船神社では「御火焚祭・御日供講員大祭」が行われます。

水を司る貴船大神が火の神から生まれたという故事を伝え、燃え盛る火の力で罪穢を祓う神事です。神社はこれを「蘇り」の神事と説明しています。水と火を対立させず、火から新しい力を受け取るという物語に、冬の入口らしい再生の感覚があります。

伏見稲荷大社|実りを送り、冬へ入る

11月8日、伏見稲荷大社の火焚祭では、秋の収穫と万物を育てた神恩に感謝し、全国から奉納された十数万本の火焚串が焚き上げられます。

13時からの祭典に続き、18時からは篝火のなかで御神楽が奉奏されます。収穫を終えた稲藁と祈りを火へ返し、土地が冬の眠りへ入っていく。お火焚きが農の暦と結びつくことを、最も大きな規模で見ることができます。

満足稲荷神社|町のなかで、無病息災を願う

東山の満足稲荷神社では、11月8日にお火焚きが営まれます。奉納された火焚串を焚き上げ、氏子中の安全を祈るとともに、湯立神楽で諸難を祓い、無病息災を願います。

京都の町なかに残る、小さな神社の年中行事です。大きな観光行事としてではなく、土地の人が冬を迎えるための火として見てみたいお火焚きです。

開催概要

花山稲荷神社 火焚祭(ふいご祭)

  • 日時:2026年11月8日(日)14:30〜
  • 会場:花山稲荷神社
  • 所在地:京都市山科区西野山欠ノ上町65
  • 交通:京阪バス「花山稲荷」から徒歩約3分、または「川田道・射場ノ上町」から徒歩5〜8分
  • 公式案内:公式情報を見る

貴船神社 御火焚祭・御日供講員大祭

  • 日時:2026年11月7日(土)11:00〜
  • 会場:貴船神社
  • 所在地:京都市左京区鞍馬貴船町180
  • 交通:京都バス「貴船」から徒歩約5分
  • 公式案内:公式情報を見る

伏見稲荷大社 火焚祭

  • 日時:2026年11月8日(日)13:00〜/御神楽18:00〜
  • 会場:伏見稲荷大社
  • 所在地:京都市伏見区深草薮之内町68
  • 交通:JR奈良線「稲荷駅」すぐ/京阪本線「伏見稲荷駅」から徒歩約5分
  • 公式案内:公式情報を見る

満足稲荷神社 お火焚き

  • 日時:2026年11月8日(日)14:00〜
  • 会場:満足稲荷神社
  • 所在地:京都市左京区東門前町527-1
  • 交通:地下鉄東西線「東山駅」から北へ約50m
  • 公式案内:公式情報を見る

※本記事は2026年11月3日時点の公式発表をもとに編集しています。天候や祭儀の都合により、時刻や参列方法が変更される場合があります。お出かけ前に必ず各公式サイトをご確認ください。
※アイキャッチとカルーセルは、立冬とお火焚きを題材にMEGURIWAが制作したイメージです。実際の催事風景を撮影したものではありません。

お火焚きふいご祭イベント京都工芸手仕事月:11民俗立冬